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違国日記と発達障害

違国日記、完結まで読了。

これは久々の何度も読み返したい、数年後読み返した時に刺さる部分が変化しそうな作品です。

出会えてよかった、わたしを拾い上げて掬ってくれてありがとうと感じる。ひとりぼっちの寂しさと完全さ、美しさに感じ入る作品はそうそうない。

人見知りの少女小説家、高代槙生が交通事故で両親を亡くした姉の子である朝を引き取る話。
姉といっても槙生さんと姉の折り合いは悪かったので、朝を愛することはできないかもしれないと割り切った上で(しかもあなたを愛せるかどうかわからないと中学3年の両親を亡くした朝に伝えてしまう)朝を引き取ることにするのだが‥というあらすじ。

槙生さんは最初から嘘偽りない態度で朝に接している。「私は大抵不機嫌だし、あなたを愛せるかどうかはわからない。でも私は決してあなたを踏み躙らない」
人としてあるべき姿を貫いている。かっこよすぎる。

槙生さんがイケメンすぎて途中まで男性か女性かわからなかった笑。

槙生さんの抱えている生きづらさー片付けられない、人付き合いが難しい、掃除が出来ない、定期的に1人の時間が必要、物覚えが悪い、雑務や事務が苦手‥などいわゆる発達障害の人の抱えているいきづらさとそれによって生じる家族や周囲との軋轢、でも自分であることしかできないもどかしさに共感するのはもちろんのこと、それ以上に槙生さんの魅力にどっぷりハマってしまった。

ちなみに発達障害がこの作品のテーマの一つと作者のヤマシタトモコ先生自身が公表しています。

弁護士の塔野先生も勉強はできるけど人間味がない、発達障害の人として描かれていますね。この方や槙生さんの元彼坂町くんの男性として生きることの葛藤についての描写も素晴らしい。
ジェンダーの問題、LGBT、ルッキズム、親子関係、さまざまなまさに今現代日本で私たちが直面しているテーマが盛り沢山。しかもそのテーマ全てに手を抜いていない。素晴らしいです✨

槙生さんは多分自閉症スペクトラムではないかと思う。一度自分の世界に入ると何時間も戻ってこなかったり、言葉というものや自分自身であることに対する真摯なー他者からは頑固とも取れるー生き様を見ているとその傾向を感じる。
日常生活スキルは低いけれど、朝と暮らすことによってそうもいっていられなくなり、料理したり、他者と暮らすために自分を調整する。
誰しも自分以外の人と暮らすのってある程度我慢や努力が必要だけれど、槙生さんにとってはとても高いハードルなんだよね。

槙生さんの言葉に対する、そして自分の信念に沿って生きることに対する真摯さは強力な光として、魅力として私には映る。たぶん読者の多くにとってもそうだ。本人にとっては生きづらさもあるだろうけれどこうありたいと憧れてもしまう。

周りがどう感じていようがお構いなく自分で正しいと思ったことを瞬時に選び取る勇気、決して上部だけの綺麗な言葉で取り繕わずに真実を伝えてくる誠実さ、美しさ。周囲が苦労することもあるだろうけれど笑。

槙生さん名言集があり過ぎて、名言集があったら手元に置きたいです。

槙生さん名言集の一例

あなたの感じ方はあなただけのもので誰にも責める権利はない

あなたには誰からでも自分の秘密を守る権利があるよ

群は危険と安全を同時に孕む 私と同様あなたも群れに向かないかもしれない